これまで私は、「折れない心」という言葉を何度も使ってきました。分かりやすいですし、レジリエンスを伝える言葉としても、とても使いやすいものです。
でも最近、少し違うことを考えるようになりました。
人間は、本当に「折れない」ことを目指さなければならないのだろうか。
悲しいことがあれば落ち込みます。失敗すれば自信をなくします。身体を壊せば立ち止まります。人間関係で傷つくこともあります。それは、弱さなのでしょうか。
こんにちは、ハーバード大学流心理学で心と脳をポジティブに整える専門家、長沢修司です。
今日、新しい気付きや心動くこと見つけましたか?
自分の強みを生かしながら、モチベーション高く、前向きに、そして、ワクワクしながら、自分で考え行動し、ポジティブで健康な心で生きられるようにサポートしています。
私は今、「折れない人」になるよりも、「戻ってこられる人」でありたいと思っています。この言い方に変えてから、自分自身、ずいぶん楽になった気がします。今日は、そのことについてお話ししたいと思います。
私も「折れたことのない人」ではない

30年以上の教師生活でも、すべてが順調だったわけではありません。思うように子どもに伝わらないことも、自分の力不足を感じることも、仕事で迷うことも、何度もありました。
退職して新しい道へ進んでからも、思った通りにならないことはあります。そして最近は、大きな手術を経験して、身体的にも立ち止まることになりました。
「こんな困難を乗り越えました」という、きれいな成功物語にするつもりはありません。私も落ち込みます。迷います。不安にもなります。それは、今も変わりません。
レジリエンスを伝える仕事をしていると、「いつも前向きで、ぶれない人」だと思われることがあります。でも実際の私は、皆さんとそれほど変わりません。ただ、落ち込んだあとにどうするか、その部分について、少しだけ考えを重ねてきただけなのだと思っています。
特に教育や仕事の世界では、「弱音を吐かない」「人に迷惑をかけない」「最後までやり抜く」「多少つらくても頑張る」ことが評価される場面があります。
もちろん、忍耐や責任感は大切です。しかし、それが行き過ぎると、「休んではいけない」「助けを求めてはいけない」「弱いところを見せてはいけない」となってしまいます。
強さと我慢は、同じではありません。私は、そのことに少しずつ気づいていきました。
若い頃の私は、弱音を吐かずに一人で抱え込むことを、どこか美徳のように感じていたのかもしれません。今振り返ると、それは強さというより、助けを求める方法を知らなかっただけなのだと思います。
レジリエンスを学んで「強さ」の意味が変わった
レジリエンスは、困難やストレスがあっても影響を受けないことではありません。傷つくこともあります。感情が揺れることもあります。一時的に調子を崩すこともあります。それでも状況に適応しながら、回復したり、新しいやり方を見つけたりしていく。それが、レジリエンスです。
私はよく、これを竹のしなやかさにたとえます。鋼鉄のような硬さではなく、風を受けてもまた戻る、竹のようなしなやかさです。
ただし、これは「必ず元通りになる」という意味ではありません。ここが、今回一番お伝えしたいところにつながっていきます。
「戻る」とは、元の自分に戻ることではない

大きな出来事を経験すると、人は以前と同じではいられないことがあります。手術を経験すれば、健康に対する考え方が変わります。失敗すれば、仕事への向き合い方が変わります。別れを経験すれば、人とのつながりの意味が変わります。
だから、「戻ってくる」とは、過去の自分とまったく同じ状態に戻ることではないのだと、私は思うようになりました。経験から何かを受け取り、新しい自分として、もう一度日常へ戻ってくる。それが、私の考える「戻る」ということです。
以前の私なら、「早く元通りにならなければ」と焦っていたかもしれません。しかし今は、元通りになることをゴールにする必要はないのだと思っています。むしろ、経験する前とは少し違う自分になって戻ってくることの方が、自然なことのように感じます。
私は、レジリエンスを「4つの心の筋肉」として伝えています。
一つ目は、感情のコントロールです。つらい感情を消すのではなく、「今、自分はつらいんだ」と気づき、少しずつ整えていく力です。
二つ目は、自己効力感です。「絶対できる」ではなく、「まず一つやってみよう」と思える感覚です。
三つ目は、楽観性です。「必ずうまくいく」と思い込むのではなく、「今は大変でも、この状態が永遠に続くとは限らない」と、未来の可能性を見る力です。
四つ目は、人とのつながりです。一人で何とかしようとせず、必要なときに人を頼る力です。
この4つを、私は「折れないための鎧」ではなく、戻ってくるための力だと考えています。
戻るためには「休む」ことも必要

レジリエンスというと、「すぐ立ち直る」というイメージを持たれることもあります。しかし、回復の速さを競う必要はありません。
一晩で戻れることもあれば、何週間、何か月とかかることもあります。ときには自分だけで抱え込まず、周囲や専門家の助けが必要になる場合もあります。
立ち止まっている時間も、戻るためのプロセスの一部なのだと、私は思っています。
挑戦するためにも「戻れる」という感覚が必要
新しいことを始めれば、失敗する可能性があります。だから、「絶対失敗しない方法」を探していたら、なかなか一歩を踏み出せません。
でも、「うまくいかなかったら、そのときまた考えよう」「失敗しても、もう一度やり直せる」と思えたら、挑戦へのハードルは下がります。
レジリエンスは、逆境から立ち直る力であると同時に、挑戦する勇気を支える土台にもなるのだと思います。
人生後半こそ「戻ってこられる力」を持ちたい
40代、50代、60代、70代。年齢を重ねても、人生から困難がなくなるわけではありません。だから目指したいのは、「何も起こらない人生」ではなく、何かあったときにも、自分なりに人生を立て直していけることなのだと思います。
若い頃のように無理をして乗り越えるのではなく、休む。人を頼る。やり方を変える。必要なら目標そのものを変える。それもまた、一つの強さです。
人生後半になると、体力や環境が、若い頃と同じようにはいきません。だからこそ、力任せに乗り越えるやり方だけに頼らず、自分に合った戻り方を持っておくことが、これからの人生を支える土台になるのだと思います。
まとめ ― 私は「戻ってこられる人」でありたい

私はこれからも、落ち込むことがあると思います。失敗することもあるでしょう。身体が思うようにならず、立ち止まることもあるかもしれません。
だから私は、「何があっても折れない人」になりたいとは思いません。
折れてもいい。立ち止まってもいい。誰かに助けてもらってもいい。それでも、自分なりの方法で、また戻ってくる。私がこれから育てていきたいのは、そんな強さです。
そして、それこそが私が伝えたい「レジリエンス」なのだと思っています。完璧に折れない自分を目指すのではなく、何度でも戻ってこられる自分を、これからも育てていきたいと思っています。
今日の自己革命の一歩 ― あなたの「戻り方」を一つ持っておく
あなたは落ち込んだとき、何をすると少し自分に戻れますか。
散歩する。音楽を聴く。眠る。自然の中へ行く。誰かと話す。ノートに書く。好きなものを食べる。何でも構いません。
「自分を元気にする方法」ではなく、「自分に戻る方法」を一つ、書いておいてください。それが、今日のワークです。
ではまた!






























