久しぶりにおすすめの本を紹介をします。
『同調圧力』(2019.6.10発行 角川新書、望月衣塑子、前川喜平、マーティン・ファクラー共著、840円)
あなたは毎日がなんとななく重苦しく感じませんか?今あなたを取り巻く社会全体で何が起こっているのか、この閉塞感に満ちた重苦しい空気感は何のか?本書を読むとその答えが分かります。
今の日本社会全体を覆っている正体
著者の3人は、7時間に及ぶ対談の中で生まれてきたのが「同調圧力」という言葉だったといいます。
望月衣塑子さんは、菅官房長官への質問が逆鱗に触れ、質問回数の制限など様々な妨害を経験。その経験から『記者の同調圧力』を第1章で書いています。
前川喜平さんは、文部科学省時代の政権からの、教育行政への凄まじい介入の実態を『組織と学校現場の同調圧力』として第2章を執筆しています。
マーティン・ファクラーさんは、諸外国、特にアメリカのジャーナリズムと日本のジャーナリズムの違いなどを自分の経験の下、『メディアの同調圧力』として第3章を執筆しています。
そして、巻末付録として執筆者3人の座談会「同調圧力から抜け出すには」が掲載されています。
もともとこの座談会は、望月衣塑子さんの著書『新聞記者』が映画製作されるのを機におこなったものです。座談会の様子は、映画の中でも流されます。
*映画「新瓶記者」は 、シム・ウンギョン・松坂桃李主演で2019年6月公開。
同調圧力とはなにか
同調圧力とは「過度に高まりすぎた「向社会性」のこと」です。
「向社会性」とは、社会のために何かしたい、他人のために役立ちたいと行動する性質のことです。私たちにとてって無くてはならないものです。ちなみに反対語は反社会性です。しかし、この向社会性が過度に高まりすぎると、とても危険な現象が起きることがわかっています。
- 排外感情の高まり
- 過剰な制裁
排外感情の高まりは、例えばヘイトスピーチや移民排除の思想など、自分たちと違う人達に対する敵対心、あるいは不当に低く評価する気持ちです。
過剰な制裁は、制裁すべきでないときにも制裁してしまうようなことが起こる現象のことです。例えば、単にルールを知らなかっただけの人、体が小さくて、みんなの役に立ちそうに見えない人、ちょっと生意気、ちょっとみんなと常識が違う、ちょっとめだつ、かわいい顔、みんなのスタンダードとちょっとだけ違う人というだけで、制裁感情が発動してしまう場合のことです。
この同調圧力の高まりがいじめの過激化の元凶です。
レジリエンス教育では、ストレスなどネガティブな感情は人間がいきていくために必要な感情、つまり生存本能としての役割を担ってきたんですよと話ししてきましたが、この「向社会性」というのも同じ様な役割があるんです。
どういうことか説明しますね。
生存本能としての向社会性
他の生き物に比べ、とても弱い人間は、種を残すために社会的な集団を作り、協力的な行動をとることで集団を守ってきました。
この様な社会的な集団にとって最も恐ろしい敵は何だと思いますか?
実はそれは、中から集団を壊しそうな行動をする人間なんです。外からの攻撃や他の集団の存在は、逆に自分たちの集団を守ろうとする結束力を高まり、強くなるんです。
つまり、集団を守るためにみんなが結束しているのに、それを守らなかったり、自分かってな行動をしていると、集団が機能しなくなります。そのため、集団を壊すような行動をする人を制裁したり排除するようになります。これは、とてもリスクの高いことではあったのですが、集団を守るためには必要な機能として人間が本能として備えたんですね。
ですから、集団があるところには必ず制裁・排除の機能が働くんです。それがが過剰になると、過剰制裁となり、学校や会社でのいじめになります。
ただ、この過剰な制裁は、日本という国では特に起きやすいといわれます。
つまり同調圧力が強くなりやすい国、国民性があるということです。極端な言い方をすると日本人というのは同調圧力を強め、過剰な制裁を起こしやすい、つまりいじめをしやすい国民性があるということです。
では、なぜ、日本人は同調圧力を強めやすいのか。
様々な原因が検討されていますが、その一つに、日本人の持つ不安症傾向が原因ではないかというものがあります。
日本人は世界中のどの国と比較してもダントツで不安症傾向を持つ人が多いことがわかっています。その数は、なんと全体の80パーセントともいわれます。この数字の高さは日本人にだけ見られるものだといいます。良く言えば、「慎重で空気を読む人」、「和を壊さず、先を読む人」。今で言えば、忖度できる人でしょうか。
なぜ、日本人に不安症傾向が多いのかというと、これも諸説ありですが、日本が島国で、江戸時代の平和な時が何百年も続いたことが大きいのではないかともいわれています。
リスクをわざわざお買う必要はなく、協力して生活していれば良い時代だったので、和を壊さず、リスクを背負わないように周りの空気を読むような生き方が身についたのではないか、ということです。
そして、それは、ちょっと違った人を見つけやすかったり見つけようとする気持ちを作りやすかった、つまり、周りにのことが気になるという傾向を強めたということです。
まとめ
久しぶりにおすすめしたい本を読んだので「日々の息苦しさの原因は『同調圧力』!息苦しさから自由になるために」というタイトルで記事を書きました。ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
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