「あの人は、なぜ折れないのだろう」
同じような失敗を経験しても、すぐに立ち直る人がいます。
仕事で思うような結果が出なかった。
人間関係で傷ついた。
予想もしなかった問題が起きた。
これまで積み重ねてきたものを失った。
そんな苦しい状況に置かれれば、誰でも落ち込みます。
それでも、しばらくすると気持ちを立て直し、再び前へ進み始める人がいます。
失敗しても、そこから何かを学ぶ。
落ち込んでも、自分なりのペースで戻ってくる。
年齢を重ねても、新しいことに挑戦する。
そうした人を見ると、
「あの人は、もともと心が強いのだろう」
と思うかもしれません。

こんにちは、ハーバード大学流心理学で心と脳をポジティブに整える専門家、長沢修司です。
今日、新しい気付きや心動くこと見つけましたか?
自分の強みを生かしながら、モチベーション高く、前向きに、そして、ワクワクしながら、自分で考え行動し、ポジティブで健康な心で生きられるようにサポートしています。
でも、立ち直れる人が、特別に強い心を持って生まれたとは限りません。
不安になることもあります。
自信を失うこともあります。
何もしたくないほど落ち込む日もあります。
それでも戻ってこられるのは、日頃から心を支える行動を積み重ねているからです。
つまり、違いを生み出しているのは、才能ではなく習慣です。
困難から立ち直る力である「レジリエンス」は、生まれつき決まっているものではありません。
毎日の小さな行動によって、何歳からでも少しずつ育てていくことができます。
レジリエンスとは何か

レジリエンスとは、困難や逆境に直面したときに、そこから立ち直り、再び前へ進んでいく力のことです。
ただし、レジリエンスが高い人とは、何があっても傷つかない人ではありません。
落ち込まない人でも、不安を感じない人でもありません。
苦しいときには苦しいと感じる。
悲しいときには悲しむ。
それでも、その状態から少しずつ回復し、自分の生活へ戻っていく。
この「戻ってくる力」がレジリエンスです。
私はレジリエンスを、次の4つの「心の筋肉」から成り立つものだと考えています。
一つ目は、感情を受け止め、整える力である「感情のコントロール」です。
二つ目は、「自分なら何とかできるかもしれない」と思える「自己効力感」です。
三つ目は、今が苦しくても、未来には可能性があると考える「楽観性」です。
四つ目は、必要なときに人を頼り、支え合う「人とのつながり」です。
これらは、持っているか、持っていないかというものではありません。
体の筋肉と同じように、日々使うことで少しずつ強くなっていきます。
では、レジリエンスが高い人は、普段どのようなことをしているのでしょうか。
ここからは、共通して見られる7つの習慣を紹介します。
感情を否定しない

レジリエンスが高い人は、自分の感情を無理に消そうとしません。
落ち込んでいるときに、
「こんなことで落ち込んではいけない」
と自分を責めることもありません。
不安を感じたときに、
「もっと前向きにならなければ」
と無理に気持ちを切り替えようともしません。
まずは、
「今、自分は落ち込んでいる」
「失敗するのが怖い」
「本当はとても悔しい」
と、そのまま認めます。
なぜなら、感情は否定するほど強く残りやすいからです。
悲しみや不安を無理に押し込めても、感情そのものが消えるわけではありません。
むしろ、自分の中にたまり続け、別の形で表れることがあります。
一方で、
「今はつらいと感じているんだな」
と認めることができると、感情との間に少し距離が生まれます。
すると、感情にすべてを支配されるのではなく、
「では、今の自分に何ができるだろう」
と次の行動を考えられるようになります。
レジリエンスが高い人は、落ち込まないのではありません。
落ち込んだ自分を否定せず、必要な時間を取りながら、少しずつ立て直しているのです。
感情を整える第一歩は、前向きになることではありません。
今の感情を、そのまま認めることです。
小さな成功体験を積み重ねる

困難から立ち直るためには、
「自分なら何とかできるかもしれない」
と思える感覚が必要です。
この感覚を、心理学では自己効力感と呼びます。
レジリエンスが高い人は、この自己効力感を育てるために、小さな成功体験を大切にしています。
大きな目標を達成することだけを成功だとは考えません。
朝、予定していた時間に起きられた。
10分だけ散歩できた。
後回しにしていた連絡ができた。
本を1ページ読めた。
苦手な相手にも挨拶できた。
こうした小さな行動も、立派な成功として受け止めます。
私たちは、できなかったことにはすぐ気づきます。
一方で、できたことは当たり前だと思い、見過ごしてしまいがちです。
しかし、できなかったことばかりを見ていると、
「自分は何をやってもうまくいかない」
という感覚が強くなります。
反対に、小さくてもできたことに目を向けると、
「自分にもできることがある」
「少しずつなら進める」
という実感が育っていきます。
おすすめなのは、一日の終わりに「今日できたこと」を3つ書く習慣です。
特別なことでなくて構いません。
- 疲れていても仕事に行った。
- 食事を用意した。
- 誰かに感謝を伝えた。
そんな小さな達成を言葉にすることで、自分への信頼が少しずつ積み重なります。
大きな自信は、突然生まれるものではありません。
小さな「できた」の積み重ねから育っていくのです。
失敗を「経験」に変える

失敗したとき、
「自分はダメだ」
と考えるか、
「ここから何を学べるだろう」
と考えるか。
この違いは、その後の立ち直り方に大きく影響します。
レジリエンスが高い人は、失敗を自分の価値と結びつけません。
仕事で失敗したからといって、自分自身に価値がないとは考えない。
挑戦してうまくいかなかったからといって、才能がないと決めつけない。
起きた出来事と、自分自身を切り離して考えます。
そのうえで、
「何がうまくいかなかったのか」
「次は何を変えればいいのか」
「今回の経験から学べることは何か」
と問い直します。
このように、出来事の見方を変えることを「リフレーミング」と呼びます。
たとえば、新しい仕事に応募して不採用になったとします。
「自分には能力がない」
と捉えれば、次の応募が怖くなります。
しかし、
「準備すべき点が見つかった」
「自分に合う場所を探す途中にいる」
「挑戦したからこそ、経験を得られた」
と捉え直せば、次の行動につなげられます。
もちろん、失敗を無理に前向きに解釈する必要はありません。
悔しいときには、悔しさを感じていいのです。
ただ、そこで終わりにせず、
「この経験を次にどう生かすか」
を考える。
失敗は、起きた瞬間に経験になるわけではありません。
振り返り、学びを見つけたときに、初めて未来に生かせる経験へ変わるのです。
一人で抱え込まない

レジリエンスが高い人というと、誰にも頼らず、自分の力だけで困難を乗り越える人を想像するかもしれません。
しかし実際は、その反対です。
立ち直る力のある人ほど、必要なときに人を頼ります。
家族に話す。
友人に相談する。
職場の人に助けを求める。
専門家の力を借りる。
すべてを一人で解決しようとしません。
つらいとき、人は視野が狭くなります。
同じことを何度も考え、悪い結果ばかりを想像してしまうこともあります。
そんなとき、誰かに話すだけで、自分の考えが整理されることがあります。
自分では思いつかなかった見方を教えてもらえることもあります。
また、問題がすぐに解決しなくても、
「自分は一人ではない」
と感じられるだけで、心の負担は軽くなります。
助けを求めることは、弱さではありません。
自分の状態を理解し、必要な支えを選ぶ力です。
普段から挨拶をする。
短い会話を大切にする。
困ったときに連絡できる人を持つ。
自分からも人の話を聞く。
こうした日常のつながりが、いざというときの支えになります。
人は一人でも頑張れます。
しかし、ずっと一人で頑張り続けることはできません。
レジリエンスは、個人の心の強さだけでなく、人とのつながりによっても育てられるのです。
身体を整える

心を強くしようとすると、多くの人は考え方を変えようとします。
もちろん、物事の捉え方を整えることは大切です。
しかし、レジリエンスの土台にあるのは身体です。
睡眠不足が続けば、普段なら気にならない一言にも傷つきやすくなります。
疲れがたまれば、物事を悪い方向に考えやすくなります。
食事が乱れ、ほとんど体を動かさない生活が続けば、心の余裕も失われやすくなります。
つまり、心と身体は別々ではありません。
レジリエンスが高い人は、気持ちを整える前に、まず身体の状態を見直します。
しっかり眠る。
食事を抜きすぎない。
少しでも体を動かす。
疲れているときは休む。
どれも特別なことではありません。
しかし、こうした基本的な習慣が、心の回復力を支えています。
落ち込んでいるときに、無理に答えを出そうとしても、よい考えが浮かばないことがあります。
そんなときは、考えることを一度やめて、早めに眠る。
少し外を歩く。
温かいものを食べる。
深く呼吸する。
それだけで、翌日には見え方が変わることがあります。
心が弱っていると感じたときほど、身体を置き去りにしないことが大切です。
レジリエンスは、前向きな言葉だけで作られるものではありません。
毎日の睡眠、食事、運動といった、身体を整える習慣から始まります。
感謝できることを見つける

レジリエンスが高い人は、日常の中にある小さなよいことを見つけるのが上手です。
家族がいてくれる。
今日も食事ができた。
誰かが声をかけてくれた。
無事に一日を終えられた。
きれいな空を見ることができた。
こうした出来事に気づき、感謝します。
感謝というと、大きな幸運に対して抱くものだと思うかもしれません。
しかし、大切なのは特別な出来事を待つことではありません。
すでにあるものに気づくことです。
人の脳は、危険や不足に意識を向けやすい性質があります。
そのため、何も意識しなければ、
「足りないもの」
「うまくいかなかったこと」
「不満に感じること」
ばかりが目につきます。
そこで、意識して感謝できることを探します。
すると、困難な状況の中にも、
「すべてが悪いわけではない」
と気づけるようになります。
これは、問題から目をそらすことではありません。
現実の中にある支えや希望も、同時に見ようとすることです。
一日の終わりに、感謝できることを一つ書いてみてください。
- 「家族が話を聞いてくれた」
- 「温かいお茶がおいしかった」
- 「今日も無事に帰ってこられた」
それくらい小さなことで十分です。
感謝を習慣にすると、日常の見え方が少しずつ変わります。
そして、よいことに気づく力が、苦しいときの心を支えてくれるのです。
未来に小さな希望を持つ

レジリエンスが高い人は、未来に小さな楽しみを持っています。
それは、必ずしも大きな夢や壮大な目標ではありません。
来週、友人と食事をする。
来月、行きたかった場所へ行く。
半年後までに、新しいことを一つ学ぶ。
休日に好きな本を読む。
そんな身近な予定でも構いません。
大切なのは、
「少し先に楽しみがある」
と思えることです。
苦しい状況にいるとき、人は「この状態がずっと続く」と感じてしまうことがあります。
今のつらさが未来まで続くように思え、何も変わらない気がしてしまいます。
しかし、未来に小さな予定があると、意識が少し先へ向きます。
「そこまでは進んでみよう」
「それを楽しみに、今日は休もう」
と思えるようになります。
希望とは、必ず成功すると信じることではありません。
すべてがうまくいくと思い込むことでもありません。
今は苦しくても、未来にはまだ変化の可能性があると思えることです。
大きな夢を持てないときは、無理に持たなくても大丈夫です。
まずは、来週の楽しみを一つ決める。
行きたい場所を一つ書く。
会いたい人に連絡する。
少し先の自分に、小さな予定を用意する。
未来へ向かう力は、壮大な目標だけから生まれるものではありません。
身近な楽しみや、小さな希望が、次の一歩を支えてくれます。
7つの習慣に共通していること

ここまで、レジリエンスが高い人に共通する7つの習慣を紹介してきました。
感情を認める。
小さな成功に気づく。
失敗から学ぶ。
人を頼る。
身体を整える。
感謝する。
未来に小さな希望を持つ。
こうして並べてみると、気づくことがあります。
どれも、特別な才能を必要とすることではありません。
高い能力がなければできないことでもありません。
今日から始められる、小さな行動ばかりです。
レジリエンスが高い人は、困難に直面したときだけ特別なことをしているわけではありません。
普段の生活の中で、自分を支える行動を少しずつ積み重ねています。
だから、いざ逆境に直面したときにも、完全に自分を見失わずに済むのです。
心の強さは、大きな出来事の中で突然生まれるものではありません。
何も起きていないように見える日常の中で、少しずつ作られています。
毎日の小さな行動が、心の土台になるのです。
レジリエンスは何歳からでも鍛えられる
「自分は昔から心が弱い」
「すぐに落ち込む性格だから変われない」
「今さら考え方は変わらない」
そう感じる人もいるかもしれません。
しかし、レジリエンスは生まれつきだけで決まるものではありません。
心の筋肉と同じように、日々使うことで少しずつ鍛えられます。
感情を言葉にする。
今日できたことを認める。
失敗したあとに学びを探す。
誰かに相談する。
身体を休ませる。
こうした行動を繰り返すことで、少しずつ立ち直り方が身についていきます。
もちろん、一度習慣にしたからといって、二度と落ち込まなくなるわけではありません。
困難に直面すれば、誰でも心は揺れます。
大切なのは、揺れないことではなく、揺れたあとに戻れることです。
以前より少し早く気持ちを整えられた。
一人で抱え込まずに相談できた。
失敗しても、もう一度挑戦できた。
そうした変化も、レジリエンスが育っている証拠です。
年齢は関係ありません。
40代でも、50代でも、60代でも、今日の行動から心の回復力を育てることができます。
今日できる小さな一歩
ここまで読んだら、7つの習慣のうち、今日から始めるものを一つだけ選んでみてください。
すべてを一度に始める必要はありません。
むしろ、最初から全部やろうとすると、続けることが難しくなります。
今の自分にとって、最も取り組みやすいものを一つ選びましょう。
今の感情をノートに書く。
今日できたことを3つ挙げる。
最近の失敗から学んだことを書く。
信頼できる人に連絡する。
今夜は少し早く眠る。
感謝できることを一つ見つける。
来週の小さな楽しみを決める。
どれでも構いません。
大切なのは、知って終わりにせず、一つだけ行動に移すことです。
小さな行動でも、繰り返せば習慣になります。
習慣になれば、困難なときに自分を支える力になります。
まとめ

折れない人とは、何があっても心が折れない人ではありません。
傷つかない人でも、落ち込まない人でもありません。
本当にレジリエンスが高い人とは、
折れても、また戻ってこられる人
です。
失敗しても、そこから学ぶ。
落ち込んでも、自分を責めすぎない。
苦しいときには、人の力を借りる。
今がつらくても、未来に小さな希望を持つ。
その違いを作っているのは、特別な才能ではありません。
毎日の習慣です。
心の回復力は、一日で身につくものではありません。
けれど、今日の小さな一歩から育てることはできます。
まずは7つの習慣の中から、一つだけ選んでみてください。
その小さな積み重ねが、困難に負けない心ではなく、困難のあとに戻ってこられる心を育ててくれるはずです。































